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医師としての原点と、アレルギー診療への思い

医師を志したきっかけは何ですか?

特に明確な理由があったわけではありませんが、人の役に立つ仕事がしたいと考えていました。家庭に医師が多かったことや、母からの勧めもあり、この道を選びました。

小児科、特にアレルギー診療に力を入れるようになった理由を教えてください

学生時代から、子どもの素直さや成長していく姿に魅力を感じ、子どもに関わる分野で働きたいと考えていました。卒業後に小児科で研修をしていた際、多くのアレルギーの患者さんと出会いました。当時の治療は現在とは異なりますが、症状が改善するにつれて子どもたちが活き活きと変わっていく姿を目の当たりにし、アレルギーに強い関心を抱くようになりました。適切な治療で子どももご家族も元気に楽しそうになられていく、そうした経験が、この道を選ぶきっかけになりました。
アレルギー治療に対する考え方と、診療で大切にしていること

アレルギー治療では、どんな点を大切にしていますか?

アレルギー治療は、風邪や肺炎のように「1週間がんばれば終わり」という性質のものではありません。乳幼児期から学童期、思春期、そして成人期まで、長い時間をかけて少しずつ前へ進んでいく治療です。
だからこそ大切にしているのは、お子さまとご家庭それぞれに合ったペースで、無理なく続けられる方法を一緒に選ぶことです。ご家庭の状況、お母さま・お父さまの忙しさ、お子さまの性格やがんばる力は、一人ひとり異なります。
「この子が無理なく続けられる方法は何か」「負担が大きくなりすぎていないか」「生活を楽しめる状態を保てているか」などを確認しながら、治療の道筋を決めていきます。
また、アレルギー治療は日々進歩しています。研修医時代とは大きく変わりました。その進歩に遅れず、かつ原則に基づいて、その時点で最善と考えられる治療を提供することを心がけています。
さらに、ご家族だけでなく、管理栄養士や臨床心理士とも連携し、多方面から支える治療を大切にしています。

長い期間の診療で、意識していることはありますか?

アレルギーは
長期間にわたる治療が必要です。
ご家庭の頑張りが強すぎるとうまくいかないことがありますし、負担が大きくなってつまずいてしまうこともあります。思春期には、お子さま自身の気持ちが治療に追いつかないこともあります。そんな時こそ、焦らずに見守る姿勢が大切だと考えています。
乳幼児期は親御さまが治療の主役となり、思春期以降はお子さま自身が自分の意思で治療に向き合う段階へ移っていきます。この移行期は特に難しく、治療が一時的に止まったり、親子で衝突が起こったりすることもあります。それでも「その子どもさんのペース」を尊重し、今できる治療を一緒に考えていくことを大切にしています。
また、治療を続ける中で「良くなっている実感を持てること」も非常に重要です。食物アレルギーでは食べられる種類が少し増えたという実感、アトピー性皮膚炎では痒みの軽減や湿疹の改善、気管支喘息ではスポーツを十分に楽しめるようになったことなど、小さな成功を一緒に確認しながら、次の一歩につなげていきます。
親御さま・お子さま・医療者の三者が一緒に協力して治療することを、基盤としています。

治療を続けるうえで、どのようなサポートを意識されていますか?

アレルギーの治療は長期間にわたることが多く、途中で疲れてしまったり、モチベーションが下がってしまうことがあります。そうした時には、臨床心理士による心理的サポートや、管理栄養士によるアレルギー食の相談など、必要に応じてスタッフと連携しながら支援できる体制を整えています。
また、子どもさんがアレルギーを発症した際に、「私の食事のせい?」「体質が似たのかしら」「遺伝なのでは」などと、ご自身を責めてしまう親御さまは少なくありません。しかし、アレルギーは「誰のせい」というものではありません。過度な不安を抱え込まず、前向きに治療に向き合えるよう、気持ちの面でもサポートして励ましていきたいと考えています。
世代を超えて受け継がれる信頼の医療、続けてきた「つながり」

長い期間診る診療の魅力は何ですか?

魅力はいろいろありますが、ひとりのお子さまの成長を長い時間軸で見守れることは、大きな魅力だと感じています。
卵でアナフィラキシーを起こしていた子どもさんが、20年近い年月を経て卵かけご飯を食べられるようになり、喜びの電話をくださったこともありました。小麦でアナフィラキシーを起こしていた子どもさんも、大学生になって大盛りラーメンを食べられるようになりました。多くの方がアレルギーを克服し、さまざまな食べ物を楽しめるようになる姿を見守れるのは、本当にありがたいことです。
また、小さい頃に通ってくれていた子が大きくなり、今度は自分のお子さんを連れて受診してくれることもあります。立派なお父さん・お母さんになられた姿を拝見できるのは、大きな喜びです。
こうした経験は、長く同じ場所で診療を続けてきたからこそいただけた、ご褒美のように感じています。

地域医療として、これからも大切にしていきたいことはありますか?

天王寺区の上本町という地域は環境が良く、交通の便にも恵まれているため、この場所で診療を続けてきました。今後も、この地域で診療を続けていきたいと考えています。
長く慣れ親しんだ場所ではありますが、常に原点に立ち返り、患者さまの立場に寄り添いながら、真摯に診療に向き合いたいと思っています。特に医療は日々進歩しているため、取り残されることのないよう、学び続ける姿勢が大切だと感じています。
子どもたちの力を信じ、正しい知識に基づいた診療を積み重ねていくことが、地域医療を支えることにつながると考えています。

大阪府医師会の食物アレルギー対策委員も務めておられますが、どの様なことをされるのですか?作成されたガイドラインについても教えてください。

まず、日本学校保健会・文部科学省監修の「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(令和元年度改訂)の作成委員会に参画しました。大阪府では平成29年に「学校における食物アレルギー対応ガイドライン」を作成していましたが、日本学校保健会のガイドライン改訂を受け、大阪府でも改訂作業を進めることになりました。
今回のガイドラインは、大阪府医師会が大阪府教育委員会と協力しながら作成したものです。学校給食で事故が起こらないよう、学校現場の栄養士さんや養護教諭など多くの関係者と連携し、学校医部会アレルギー対策委員会の先生方にもご協力いただきながら、内容をまとめていきました。
その後も、大阪府内の委員が定期的に集まり、毎年の事故報告や今後の対策について話し合いを続けています。大阪府内で事故が起こらないよう、継続的に改善策を検討し取り組んでいます。
カフェ活動について

アレルギー対応のカフェふじたにを始めた理由は何ですか?

昔と比べてアレルギー対応食品は増え、食品表示も進歩し、アレルギーのある方への配慮は確実に良くなってきています。しかし、誤食を防ぐためには、今もなお細心の注意が必要です。また、対応食品の種類は増えたものの、アレルギーに合った食品を選ばなければならず、アレルギーのない家族やきょうだいと気軽に交換して食べることが難しいという現状もあります。
そのような中で、「このカフェの中では、どの食品も自由に選んで食べられる。誰とでも交換できる。家族みんなで誤食の心配なく安心して食事を楽しめる場所をつくりたい」という気持ちから、アレルギーのお子さんを育ててこられたお母さまのご協力を得て、このカフェが始まりました。2024年にスタートし、不定期ではありますが、昨年11月には第9回のカフェを開催しました。卵・牛乳・小麦・落花生・ナッツ類・豆乳を使わずに、パンやスイーツ、ハンバーガー、ピザなどを用意し、誰もが安心して食べられるよう工夫しています。
来てくださった子どもさんやご家族が「美味しい!」と笑顔で言ってくださることが、何よりの励みです。
「カフェふじたに」を支えてくださっているのは、もともと卵、小麦など多種の食物アレルギーのお子さんを育ててこられたお母さまたちです。長年、除去食を作り続けてこられた知識と経験が、今のカフェの味と安全を支えています。

「カフェふじたに」で大切にしていることはありますか?

いちばん大切にしているのは、コンタミネーション(微量混入)を絶対に起こさないことです。
そのため、健康なお子さまでもお菓子を持ち込むことを禁止させていただいています。
少しでも混ざると症状が出る方もいるため、徹底した管理をおこなっています。
通常のお店では「あなたはこのメニューだけ」と制限されてしまうこともありますが、カフェではどのメニューを選んでも食べられる自由とご家族の安心を大切にしています。
ご家族で一緒に何でも安心して食べることが出来る時間が、子どもさんたちと保護者の方にとって貴重な体験になればと思っています。

医療と食のつながりで、今後取り組みたいことはありますか?

「よく食べ、よく寝て、よく遊ぶ」。昔から言われていることですが、この基本こそがとても大切だと感じています。
その中のひとつである「よく食べること」——毎日の食生活は、健康に生きるための基本のひとつです。今はインスタント食品やレトルト食品など、手軽に利用できるものが増えています。便利に買える一方で、旬の食材を取り入れ、栄養バランスを考えながら、おいしい食事を作ることも大切だと思っています。
栄養をしっかり取ることはもちろん重要ですが、同じくらい「食事を楽しむこと」も大切です。「美味しく食べてくれるかな」と思いながら食事を作る時間が、保護者の方にとっても楽しみになれば嬉しいです。忙しい毎日の中でも、家族のために料理を作る楽しみ、一緒に作る楽しみ、一緒に食べる楽しみをお伝えしていければと思っています。
ホームページをご覧の方へのメッセージ

アレルギーと向き合うご家族へ、メッセージをお願いします

食物アレルギーと聞くと不安になったり、これから長い治療が続くのではと心配されたりする方も多いと思います。
でも、食物アレルギーの多くは、統計的にも3歳までに約半数、小学校までに約8割が食べられるようになるとされています。
ナッツ類のように時間がかかるものもありますが、不可能と決めないで希望をもって
進めていただきたいと思います。
そして「できないことばかり」に目を向けず、その子どもさんの個性として前向きに付き合っていくことが大切です。
アレルギーがあることで、親子で一緒に食事を考えたり、スキンケアを丁寧にすることで自然とスキンシップや家族間の信頼や絆が増えることもあります。
決して悪いことばかりではありません。
前向きに、希望を持って歩んでもらいたいと思っています。

育てにくさや不安を抱えるご家庭に、伝えたいことはありますか?

お子さまの育てにくさを感じるご家庭は、近年確かに増えてきています。現在、ADHD学習障害、自閉症などを含むいわゆる「発達障害」といわれる子どもさんは約10%いるとも言われています。昔は「落ち着きがない子」「少し変わった子」と受け止められていたことが、今は診断名がつくことで、かえって不安が大きくなることもあるかもしれません。
しかし、アレルギーでも他の疾患でも、早く診断され、早い段階から適切に関わることで、子どもさん自身がずっと楽になります。まずはお子さんの状態を受け止め、そのお子さんにあったに合った関わり方をしていくことが大切だと感じています。
不安があると、ネットでさまざまな情報を調べたくなる気持ちもよく分かります。ただ、ネットの情報はお子さんの状況に必ずしも合うとは限りません。ぜひ、かかりつけ医と相談しながら、実際にお子さんの様子を見たうえで、最適な対応を一緒に考えていただければと思います。

最後に、ホームページをご覧の皆さまへメッセージをお願いします。

小児医療は病気を治すことと同じように予防することが大切になっています。特に乳幼児健診などで、早期発見、早期介入、予防の大切さが言われるようになりました。
当院もその方針で診療しています。
アレルギーにつきましては、罹患数は増加していますが、日々の医療の進歩によって対応策が多彩になりました。子どもさんは将来の成長がなにより大切です。目の前の安易な治療法に走らず、立派に成長発達することを考え、必要な時に適切な医療を受けながら、安心して毎日を過ごしてほしいと思っています。
お子様のことでお悩みの時も、将来に希望を持って今不可能なことも不可能と決めつけず、一緒に始めてみませんか?
大人の方もアレルギーでご不安な時はお気軽にご相談いただけたらと思います。
皆さんで協力して健康な生活を守っていきましょう。
